【実録】施工図からCAV・VAV発注リストを作る時の「6つの急所」。吊り直しと性能不備を回避するプロの知恵

施工管理 ダクト

■はじめに

空調設備の施工管理を始めて数年の若手の皆さん、毎日の業務お疲れ様です。 施工図から一台ずつCAVやVAVを拾い出し、発注リストを作る作業。非常に地味で神経を使いますが、実はここが施工管理の腕の見せ所です。

単なる事務作業だと思って手を抜くと、竣工間際に「風が出ない」「メンテナンスができない」といった致命的な手戻りを招きます。今回は、私が実際に作成しているリストを例に、「拾い出しの時にどこに神経を集中すべきか」と、万が一ミスをした時の「現場でのリカバリー方法」を伝授します。

機器No 階数 系統 制御対象 型式 材質 最大風量
(m3/h)
選定風量
(x1.2)
風量レンジ 推奨風速 電圧(V) 電力(W) 個数 メーカ型番 サイズ 装置向き AD 納品予定
CAV-35-1S 35 事務所 外気 OA AI-35-01 電子 鋼板 950 1140 180~1760 1250 24 17 1 CAV-FW 250 1 2026/4/10
CAV-35-1E 35 事務所 外気 EA AI-35-01 電子 鋼板 950 1140 180~1760 1250 24 17 1 CAV-FW 250 2 2026/4/10

※表は左右にスクロールして確認できます。

■1. 装置の「勝手(向き)」を1台ずつ指差し確認する

施工図からリストに転記する際、最もミスが起きやすく、かつダメージが大きいのが「装置向き(風上から見て右・左)」です。

  • なぜ重要か:電装ボックスが壁や梁に面してしまうと、試運転調整や故障時の基板交換が物理的に不可能になります。
  • 私の苦い経験:向きの確認を怠ったまま発注し、ビル管理の方に「これではボックスが開けられない」と一蹴され、実際に吊り直しをすることに……。そんな調整不足の露呈は、プロとして一番避けたい事態です。

【もし向きを間違えてしまったら?】現場でのリカバリー術

万が一、勝手を間違えて搬入してしまった場合、現場を収めるための「裏技」があります。

  • 対処法:本体を上下逆さまにして吊り込む。
  • 施工のコツ:標準の吊りピースはリベット固定で外せないことが多いです。そのため、鉄製の巻きバンドを本体の前後2か所に回して固定することで、逆さ吊りが可能になります。
  • 注意点:性能的には問題ありませんが、「文字が逆さまになる」「ボックス内に埃が溜まりやすくなる」という弱点があります。必ず監理者に誠実に相談し、承諾を得るのが筋です。製作メーカーにも確認を行ってください。

■2. サイズ選定の極意:「推奨値以下」と「設定風量以内」

カタログの風量レンジに入っていればOK、という安易な考えは捨ててください。

  • 「推奨最大風量」を超えない:騒音を抑え、制御を安定させるためのメーカー推奨値を守るのが鉄則です。
  • 設定風量の位置を確認:常用風量が、その機器の最も得意とする制御範囲(中央付近)に収まっているかを確認します。
  • 「ダクト径=機器サイズ」という思い込みを捨てる:必ずメーカーの選定表で裏付けを取り、必要であればダクトサイズを変更してでも最適な機器を選定してください。

■3. 材質の選定:ダクトとの整合性と「用途別」仕様

材質欄(鋼板製など)も、設置環境に合わせて精査が必要です。

  • 基本はダクトと同じ:接続されるダクトの材質に合わせるのが基本です。
  • 用途による特殊仕様
    • 厨房排気用:油分による固着を防ぐ「油対策仕様」か。
    • 外気処理用:結露や外気にさらされるため、可動軸をステンレス(SUS)にする等の検討が必要。
  • 承認図での合意:現場の用途に合わせ、仕様を監理者と相談して納入仕様書の承認を確実に得ることが、後々のトラブルを防ぐ唯一の道です。

■4. センサー方式の確認:プロペラ型と熱線型

CAV・VAVが風量を検知するための「センサー」特性を理解しましょう。

  • プロペラ型(風車式):物理的に回して計測。比較的汚れに強く、メンテナンス性が高いのが特徴です。
  • 熱線型:センサーの冷却度合いで計測。低風量の検知に優れますが、油分や粉塵に弱い面があります。設置環境に対して適正なセンサーか、発注前に再考してください。

■5. 自動制御工事との連携:コントローラーの「先送り」段取り

電子式の場合、本体を発注するだけでは不十分です。

  • 型番の確認:自動制御工事会社へ、採用するコントローラーのメーカー・型番を事前に確認します。
  • 先送り・工場組み込み:制御会社からメーカーへコントローラーを「先送り」してもらい、工場で組み込んだ状態で搬入させる。この事前の段取り一工夫が、現場での結線作業や調整作業を劇的に楽にします。

■6. アドレスの整合性と納期の管理

  • アドレスの確認:各機器のアドレスが、自動制御図(計装図)の系統と正しく一致しているかを確認します。ここがズレると中央監視での操作がバラバラになり、手直しに膨大な時間を取られます。
  • 納期から逆算する:搬入日から逆算して「いつまでに承認図を回し終えるべきか」を逆算して動く。これが工程管理の基本です。

■まとめ:拾い出しリストは「現場の設計図」

施工図からリストへ数値を移す作業は、単なる事務作業ではありません。「現場を最後まで問題なく動かすための再設計」です。

  • 向きはメンテナンスができるか?(ミス時は巻きバンドで対応可)
  • サイズは推奨値以内か?
  • 用途に合わせた材質・センサーか?
  • 計装会社との連携は済んだか?

この1行ずつの拾い出しに込める注意力が、完成後の「吊り直し」や「性能不備」といった甚大な手戻りを防いでくれます。私の経験が、皆さんの正確な施工管理に繋がれば幸いです。

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