ダクトの仕様、本当に理解してる?共板 vs アングルの判断基準を整理する

■ はじめに

「長辺1500mm以下なら共板でOK」――そう覚えていても、実際の現場では「高圧ダクトでも共板?」「排煙は必ずアングル?」「1500mm超は絶対ダメ?」と迷うことがありますよね。

この記事では、設備技術者が実務で自信を持って判断できるよう、公共建築工事標準仕様書・JIS規格・大手ゼネコンの施工基準を踏まえて、ダクトフランジの選定基準を整理します。


■1. フランジ工法の選定基準:サイズと補強がカギ

フランジ工法の選択は「サイズ」「補強」「用途」の3要素で決まります。よく「高圧だからアングル」「排煙だからアングル」と言われますが、実際にはもっと柔軟です。

共板フランジ工法(TDCフランジ)

ダクト本体の板を直角に折り曲げてフランジとし、専用クリップ(Cクリップ)で固定する工法です。

基本的な適用範囲

  • 角ダクト長辺 1500mm以下(公共建築工事標準仕様書)
  • この範囲なら、一般空調・高圧・排煙・厨房すべてで使用可能
  • ただし高圧・排煙・厨房の場合は、板厚・補強・シール等級を高圧基準に引き上げること

1500mm超でも使える条件

  • JIS A4009では共板フランジは最大2200mmまで規定あり
  • ただしタイロッド(内部補強棒)等の補強が必須
  • 低圧ダクトに限る(高圧はアングル推奨)

注意すべきポイント

  • クリップの再利用は厳禁:一度外したクリップは保持力が低下しており、再使用すると気密漏れや脱落の原因になる。必ず新品を使用すること
  • フランジ面の変形・歪みがある場合は補正が必要

アングルフランジ工法

L字型の山形鋼(アングル材)をダクト端部にリベット留めまたは溶接で取り付ける工法です。

推奨・必須となる条件

  • 角ダクト長辺 1501mm以上(補強なしの場合)
  • 高圧ダクト(静圧500Pa超)で安全側に倒したい場合
  • 排煙ダクト(官庁工事では標準。民間工事では共板も可)
  • 厨房ダクト(民間工事では条件付きで共板も可)
  • 設計図書で「アングルフランジ指定」の記載がある場合

材料費・加工費ともに共板より高く、重量増により吊りボルトや支持間隔の見直しが必要になる場合もあります。

フランジ選定表

条件共板フランジアングルフランジ
長辺1500mm以下 / 低圧 / 一般空調○ 標準△ 可能だが過剰
長辺1500mm以下 / 高圧・排煙・厨房○ 可能(板厚・補強・Aシール)○ より安全
長辺1501mm以上 / 補強なし× 不可○ 推奨
長辺1501〜2200mm / タイロッド補強あり / 低圧○ 可能○ 可能
高圧 / 大型△ 慎重に判断○ 推奨

メインダクトと枝ダクトで工法を使い分けるケース

現場慣行として、メインダクト(幹線)はアングルフランジ、枝ダクトは共板フランジという使い分けをすることがあります。同一系統の中でフランジ工法を混在させる方法で、コストと信頼性のバランスをとる判断です。

この使い分けを検討する場合は、設計図書・特記仕様書に禁止の記載がないことを確認した上で、監理者に事前に確認を取るのが安全です。


■2. ハゼの種類と使い分け

ダクト胴体の板接合方法(ハゼ)は、用途によって使い分けます。

ボタンパンチハゼ(標準)

折り返し部をポンチで打ち込んで固定する工法。一般空調ダクトで最も広く使われます。製作が早くコストが抑えられ、外周シール(Bシール)と併用で十分な気密性を確保できます。

ピッツバーグハゼ

L字溝に板を差し込んで折り曲げる方式。折り返しが二重になるためボタンパンチより気密性が高く、排煙ダクト・厨房排気など気密性が特に求められる系統で採用されます。製作コスト・工期ともにボタンパンチより増加します。

選定基準まとめ:一般空調 → ボタンパンチ、排煙・厨房 → ピッツバーグ。設計図書に特記があればそれに従うこと。


■3. 板厚・補強の選定基準

板厚はSHASE-S010および公共建築工事標準仕様書に基づき選定します。

板厚の目安(低圧ダクト・亜鉛鉄板)

ダクト長辺標準板厚
〜450mm0.5mm
451〜750mm0.6mm
751〜1200mm0.8mm
1201〜1500mm1.0mm
1501mm〜1.2mm以上

高圧ダクト(500Pa超):上記より1ランク厚い板厚を選定(例:長辺1000mmなら0.8mm → 1.0mm)。

排煙ダクト:通常部分は高圧ダクトの板厚を適用。防火区画貫通部のFD周辺のみ板厚1.6mm以上が必要(平成12年告示1369号。鉄板規格に1.5mmがないため実質1.6mm)。

厨房ダクト:最低0.8mm以上を推奨。腐食・高温を考慮し、ステンレス(SUS304)やガルバリウム鋼板の使用を検討すること。

補強の種類と使い分け

ダクトが大型化すると板が自重や風圧でたわむため補強が必要になります。

① ビード補強:板に凹凸の折り目を入れる方法。追加部材不要で軽量。長辺1200mm程度まで有効。

② 外周補強(山形鋼・平鋼):ダクト外周に補強材を溶接またはリベット留め。長辺1500mm超・高圧・長スパン向け。配置間隔は一般的に2.5〜3.0m。溶接部の防錆処理を確認すること。

③ タイロッド補強ダクト内部に引張材を通して変形を抑える方法。1500mm超でも共板フランジを使える鍵となる補強です。長辺1500〜2200mm程度の大断面ダクトに適用し、本数はサイズに応じて1〜3本程度(公共建築設備工事標準図に詳細記載あり)。

タイロッドはダクト内部に障害物ができるため、厨房ダクトなど内部清掃が頻繁な系統には不向き。1500mm超で共板フランジを使う場合は、図面に「タイロッド補強」の記載があるか必ず確認してください。


■4. 気密性能を左右するシール・パッキンの実務

シールの種別と組み合わせ方(公共建築設備工事標準図)

N・A・B・Cシールは気密の「等級」ではなく、施工箇所の種別を表します。用途に応じてこれらを組み合わせて使います。

記号施工箇所
Nシールダクト接合部の折り返し四隅部
Aシールダクト縦方向のはぜ部全線
Bシールダクト接続部(フランジ接合部)
Cシールリベット・ボルト・タイロッド等の貫通部

用途別の組み合わせ

用途組み合わせ
低圧ダクト(一般空調)Nシールのみ
高圧1ダクト(ピッツバーグはぜ)Nシール
高圧1ダクト(ボタンパンチはぜ)N+Aシール
厨房・浴室等の多湿排気ダクトN+A+Bシール
高圧2ダクトA+B+(特記によりC)シール

排煙ダクトのシール組み合わせは設計図書・特記仕様書で確認してください。

シール材の選定

公共建築工事標準仕様書では、シール材は「シリコンゴム系またはニトリルゴム系を基材としたもの」と規定されています。はぜ部のシール材はブチルゴム系・クロロプレンゴム系・変成シリコンゴム系も使用可能(JIS A4009)。下記の耐熱温度は製品仕様の目安であり、規格値ではありません。採用前にメーカー仕様書を確認してください。

用途推奨材料耐熱温度の目安
一般空調変成シリコン系・ニトリルゴム系80℃程度
厨房ダクト耐熱シリコン系150〜200℃
排煙ダクト不燃シーリング材280℃以上

パッキンの材質選定

下記は業界で一般的に使用される材質の目安です。標準規格に材質ごとの耐熱温度の規定はないため、採用前にメーカー仕様書で確認してください。

材質用途耐熱温度の目安
ネオプレンゴム(クロロプレン)一般空調80℃程度
EPDM屋外・耐候性重視120℃程度
シリコンゴム排煙・厨房200℃以上
フッ素ゴム特殊用途(実験室等)200℃以上

取り付けは正確な位置に配置し、一周させた後5〜10mm重ねてカット(隙間厳禁)。締結後はパッキンが均等に潰れているか目視確認すること。防火区画貫通部では不燃材料のパッキン(セラミックファイバー等)が求められる場合があるため、特記仕様書を確認してください。


■5. 実務での判断フロー

現場や積算で迷ったときは、この順番で確認してください。

Step 1:設計図書・特記仕様書を最優先で確認(これが全て)

  • 「アングルフランジ指定」→ サイズに関わらずアングル
  • 「共板可 / TDC可」→ 共板OK
  • 記載なし → Step 2へ

Step 2:サイズ確認

  • 長辺 1500mm以下 → 共板フランジ使用可能(用途問わず)
  • 長辺 1501〜2200mm → Step 3へ
  • 長辺 2201mm以上 → アングルフランジ推奨

Step 3:補強・圧力の確認(1501mm以上の場合)

  • 図面にタイロッド補強の記載あり+低圧 → 共板可
  • 補強の記載なし、または高圧 → アングルフランジ

Step 4:用途確認

  • 排煙・厨房:官庁工事 → アングルが標準(公共建築工事標準仕様書)。民間工事 → 共板も一般的(施工基準を確認)
  • いずれも板厚・Aシールは高圧基準で

■6. よくある判断ミスと対策

ケース1:「長辺1450mmだから用途に関係なく共板でいいよね」○ 正しい判断。ただし高圧・排煙・厨房の場合は板厚・補強・シールを高圧基準に引き上げること。

ケース2:「長辺1800mmだけど、前の現場で共板だったから今回も」要確認。前回は「タイロッド補強あり」の図面だった可能性がある。1500mm超は必ず図面で補強の記載を確認し、記載がなければアングルフランジを選択。

ケース3:「排煙ダクトだからアングル一択でしょ」官庁工事なら正しい。民間工事では施工基準で共板OKの場合もあるため、工事種別と設計図書を確認。迷ったらアングルが安全。

ケース4:「クリップが余ってるから再利用しよう」絶対NG。一度使用したクリップは保持力が低下しており、気密漏れや脱落事故の原因になる。消耗品として毎回新品を使用すること。

ケース5:「補強は見えないから省略してもいいでしょ」NG。長辺1800mmで補強を省略すると、運転開始後にバタつき音が発生して再工事になる事例がある。1500mm超の共板は補強が性能の前提条件。


■7. まとめ:判断の原則

共板フランジが使える条件

  1. 長辺1500mm以下(用途問わず。高圧・排煙・厨房は板厚・補強・シール組み合わせを用途基準に引き上げ)
  2. 長辺1501〜2200mm + タイロッド補強あり + 低圧
  3. 設計図書で「共板可」の記載

アングルフランジが必須・推奨の条件

  1. 長辺1501mm以上 + 補強なし
  2. 排煙ダクト(官庁工事)
  3. 設計図書で「アングルフランジ指定」

その他の重要ポイント早見表

項目一般空調排煙・厨房・高圧
ハゼボタンパンチピッツバーグ
シールNシールのみ(四隅部)N+Aシール以上(はぜ部+四隅)
厨房・多湿時のシールN+A+Bシール
FD周辺板厚サイズ基準1.6mm以上(排煙)

絶対NG:クリップの再利用(気密漏れ・脱落の原因)

現場で迷ったら「設計図書を最優先で確認 → 迷ったら安全側(アングル・厚板・補強あり)に倒す」。この二つを徹底してください。

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